「留学」の範囲

ここで、「留学」について大上段に振りかぶるわけではありません。

日本で、「留学」と呼ばれる、あるいは、「留学」という行為に分類される範囲が、必ずしも明確ではないし、国際的にも基準があるわけではないという話です。

留学生受け入れに関わったことがあれば、必ずご存知のように、戦後、日本では、大学などの高等教育機関に在籍する外国人留学生に「留学」の在留資格を与えてきましたから、「(在日外国人)留学生」と言えば、高等教育機関に在籍していなければなりませんでした。

ところが、世間一般には、「留学」と言えば、「国内留学」とか「農村留学」とかは別として、普通、国境を越えて教育を受けることを指しますから、入国管理並びに難民認定法に定める「留学」の範囲には収まらないこともあり得ます。

まず、日本語学校に学ぶ外国人学生には昨年7月までは「就学」といく在留資格が与えられていましたから「就学生」などとも呼ばれましたし、また、例えば、3か月以内の短期間、日本に来て茶道、華道、あるいは、アニメなどを学ぶ外国人は「短期滞在」の在留資格ですから、法的には「留学」の範囲には含まれないのですが、一般の目から見れば、どれも「留学」と映ります。

ぎゃくに、日本から海外に留学する場合にも、3か月未満の語学研修や、短期集中型の勉強や研究のコースに参加する場合には、「留学」の中には含まれないことが普通です。

以前は、海外に出発するときに成田空港や関空などで「出国カード」なるものに出国の目的を書きましたが、そこには、「留学または技術習得」という項目があって、短期の語学研修生なども、そこにチェックをしたものです。

その統計数字と、文部省(当時)の統計による海外留学者数とは、常に3倍ほどの開きがあったものです。もちろん、諸外国でも「留学生」の基準が異なっているので、例えば、米国では英語学校に学ぶときも「学生」のビザが出て「留学生」に数えられる場合が少なくありません。

そして、ここへきて、昨年夏からは、日本語学校に留学する「就学生」の在留資格も「留学」に一本化したので、「留学生」の人数は一挙に3万3000人ほど多くなるという計算です。

「30万人」に一歩でも近づけようという趣旨かも知れませんが、いずれにしても、国によって「留学」の範疇が異なっているために、国際的統計数字には統一的な基準はないわけです。