2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

進学だけが日本語学校の目的であるかのような不思議

日本人は、中学や高校で英語を学びます。最近では、小学生も英語を勉強していることがあります。それは大いに結構。なるべく若いうちから母語以外の言語に触れることは、視野を広げ、価値観を多様化させる効果が期待できますし、だいいち、海外の人とのコミ…

3.11 「留学生の“生の声”の発信」

文科省が昨日、「東日本大震災に伴う外国人留学生(大学、専修学校)の在籍・就学状況(平成23年7月1日現在)及び日本で勉学に励んでいる留学生の“生の声”の発信について」の報道発表をしました。それによると、7月1日現在で被災地内の17校の留学生が通学圏…

日本語教育と高等教育との連携は今後の国際教育展開の大前提

どうやら日本だけが、日本語教育と大学や専修学校などの高等教育との連携を怠ってきてしまったようです。欧米などの留学生受け入れ先進諸国を見ると、外国人への語学教育と大学などの高等教育とは連携していることが多いのです。語学学校である程度のレベル…

日本人留学生の求人活況 説明会の参加企業5割増

海外留学を経験した日本人学生の採用を希望する日本企業が増える傾向にあるようです。日本経済新聞によれば、毎日コミュニケーションズが6〜7月に開いた説明会の参加企業は188社と前年比で46%増え、2008年の144社を上回ったとのこと。大阪と名古屋での説明会…

ホーチミンから帰りながら考えた−「人材獲得へ海外拠点増強」

今朝、帰国しました。帰途のベトナム航空の機内でたまたま目にした読売新聞の7月26日朝刊の「論点」に、東京医科歯科大の江藤一洋名誉教授が「留学生『日本離れ』防げ 人材獲得へ海外拠点増強」の見出しでコラムを書いていました。江藤先生にはこれまでもた…

まだ、ホーチミンで考えた−日本留学のメニューやパッケージの提示を

日本では、高校からその上の大学など高等教育機関に進学する人の割合が49%と言われます。昨日、ホーチミンの大学で聞いた話だと、ベトナムでは必ずしも統計数字が明確ではないようですが、3割前後が高等教育を受けるようになったとのことです。こちらでは様…

なおも、ホーチミンで考えた−やはりリクルート戦略を間違っていないか

これまで書いていることと重複すると思いますが、日本の日本語学校や大学など高等教育機関が留学生をリクルートするには、総合的な戦略が必要なわけです。まず、単独で海外に行って、「ウチの学校にいらっしゃい」と言うのは、もちろん基本ですが、それは、…

さらに、ホーチミンで考えた−「多文化主義」はイスラムとの妥協だったのか

ノルウェーのオスロ郊外で22日の起きた銃乱射事件と、同一犯人と推測されているオスロ市内での爆弾テロによる死者は合計92人になったとの痛ましいニュースが入ってきています。*1報道によれば、容疑者は移民制限を主張する進歩党の元党員で、極右組織と関係…

またまた、ホーチミンで考えた−ベトナムに必要な人財育成と日本語教育

昨日、今日と、ホーチミン市内の3年制短大と大学の学長・副学長をお訪ねして意見交換しました。3年制短大というのは、こちらでは、高校を卒業してから正規課程だと3年の課程を履修するものです。訪問したのは工業短大で、市内にしては緑豊かな広いキャンパス…

また、ホーチミンで考えた−10月期日本語学校への申請件数大幅減

(財)日本語教育振興協会の先週の発表によると、この10月期の日本語学校への申請件数は昨年同期をじつに約3,700件下回り、8,181件だったとのことです。対象439校中385校の集計による中間報告ではありますが、件数を引き下げているのは主に中国の減によるもの…

ホーチミンで考えた−日本留学の形態の多様化

午後、ホーチミンに着きました。夕方からは涼しいです。留学生を受け入れるとき、途上国からの受け入れには、日本では奨学金を用意しなければならないと考えられがちです。ベトナムからの留学生数は、毎年、10%以上の伸び率で、このところ中・韓・台に次いで第…

中堅技術者の養成は重要課題だが……。

途上国では共通して見られる現象だと思います。その国を、今後発展させるためには、最先端技術者の養成ではなく、現段階では中堅技術者を育てなければならないと思われることがよくあります。あまりに高度な最先端技術を留学先で学んでも、帰国したら、それ…

「日本語別科」という選択

留学生たちが来日後、日本語を学ぶ教育機関として、日本語学校が一般的と思われがちですが、もう一つ、大学に付属している「日本語別科」というものもあります。現在、JASSOの資料によると、大学・短大が設置する日本語別科は54あります。*1ただし、近年、この…

高校生の留学が少なすぎるのではないか?

昨日の朝日新聞の記事*1に引用されていた高校生の留学者数が2004年以降、ガクンと減っているのを見て改めて驚き、再度、文科省の資料を検索してみました。たしかに、母数の高校生数自体が減ってはいるのですが、例えば、高校生数と海外への留学生数の推移を…

「地方から留学 塾が応援」

ちょっと早めの夏休みで、2日間、休載しました m(__)m 魚沼に行って塩沢の花火を見て来ただけです。ちょうど2か月前の5月16日の日記の写真の水田の苗は、今はもう、青々とした稲穂を付け、秋の実りに向けて成長していました。今日の朝日新聞生活面に標題の記…

海外留学のリスク・マネージメント

「海外留学生安全対策協議会(JCSOS)」*1というNPOがあります。日本の大学が学生を海外に留学させた場合の安全をどう確保するかといったリスク・マネージメントを中心に取り扱い、海外留学に起因する事故をなるべく防ぎ、また、起きてしまった場合の対応策な…

日本留学の多様化に対応できる態勢も必要

中国のニュースを多く扱っているウェブサイト「サーチナ」*1は、引用や再引用の情報が多いので、それだけでは参考にならないこともあるのですが、昨12日の「日本留学経験生かしたワインバー経営」は、北京在住の前明治大学講師の近藤大介さんによるオリジナ…

「平家、海軍、国際派」

たぶん、「海軍」が入っているので、戦前・戦中に言われた言葉なのでしょうか。あるいは、もっと前だったかも知れませんが、この三者に共通なのは、見た目は派手でカッコ良いのに、国内では弱く、主流になれない人たち、という意味でしょう。「色男、カネと力…

「語学留学」という位置づけ

先月、「留学の範囲」について*1と、「短期留学」*2について書きましたが、留学の形態の多様化にもっと着目し、より実態に沿ったプログラム、あるいは、需要を喚起するものを、さらに考えていってもいいでしょう。もちろん、「スタディー・ツーリズム」*3も、…

「アジアは一つ」…であるわけはない。

岡倉天心が記した「アジアは一つ」という言葉が独り歩きしてしまい、大東亜共栄圏の思想へと援用されてしまったことは、天心にとっても、日本にとっても、また日本以外のアジアにとっても不幸なことだったに違いありません。たしかに天心は、1903年にロンド…

「華夷秩序」とアジア−(2)

日本にも「華夷秩序」大陸からの伝播で、もちろん、経由地の朝鮮半島も例外とは言えませんが、「華夷秩序」はそのまま日本にも移植されたと見ても間違いではないでしょう。直接、大陸からもたらされた部分もあることでしょう。時代によっての変化はあります…

「華夷秩序」とアジア−(1)

「華夷秩序」=「シナ中心主義」「華夷秩序」は「中華思想」と、ほほ同義に使われています。「華夷秩序」のほうが「秩序」という表現が含まれていて、その本質を表している気がするので、ここでは、こちらを使います。英語では、"Sinocentrism"なので、直訳…

やはり「韓流」がアジアで健闘

7月5日に発表になった博報堂Global HABIT調査「アジア10都市における日・韓・欧米コンテンツ受容性比較」によると、日頃、アジアで感じていることが如実に数字となって表れています。同調査によると、要は次のとおりです。 台北、香港は依然、日本コンテンツび…

交流が進めば相互理解が深まる、とは限らない。

日頃、ここに書いていることと一見、矛盾するようですが、必ずしもそうとは考えません。国際的、あるいは、異文化間の交流を促進することは大切ですが、それによって相互理解が深まるとは限らないのが現実です。例えば、日本・中国・韓国の3国は、それぞれ隣…

「異文化」と「自文化」を理解する

国際教育交流に関わる人の仕事をする基本姿勢として「異文化理解が大切」などと、よく言われます。その通りかと思います。あまり難しく考える必要もないのですが、何かと言うと「異文化」という言葉が使われる気がするので、少し触れておきましょう。「異文…

「国際交流」という切り口でまとめたらどうか?

以前から「省庁縦割り」で効率が悪いと言われる分野は多いのですが、国際教育交流も、その最たるものの一つでしょう。中央官庁は、長い歴史と経緯があって今の形になっているわけですが、国際教育交流に関して見ると、文科省・文化庁、外務省、経産省、国交省…

「愛は胃袋から」−これも「ソフト・パワー」?

スペインの諺とか聞きましたが事実かどうかは知りません。"El amor entra por el estómago."(=「愛は胃袋を通って入る」)という表現は確かにあるようですが、他の言語にもあるかも知れません。もともとの意味は、「男の愛を獲得しようとすれば、女は料理上…

「ソフト・パワー」をもう一度考える。

ジョセフ・ナイの『ソフト・パワー』 オバマ大統領になってから、駐日大使を取りざたされたこともあるジョセフ・ナイが、『ソフト・パワー 21世紀国際政治を制する見えざる力』(原題 Soft Power: The Means to Success in Wold Politics=ソフト・パワー 世界政治…

漢越語−ベトナム語の中の漢語

この半年ほどの間に、私にとって、にわかにベトナムとの関わりが強くなってきて、ベトナム語に触れる機会も増えたのですが、日本語や朝鮮語*1と同様、ベトナム語にも多くの漢語が含まれることに驚きます。*2「ベトナム」を「越南」と書くことはよく知られて…