漢越語−ベトナム語の中の漢語

この半年ほどの間に、私にとって、にわかにベトナムとの関わりが強くなってきて、ベトナム語に触れる機会も増えたのですが、日本語や朝鮮語*1と同様、ベトナム語にも多くの漢語が含まれることに驚きます。*2

ベトナム」を「越南」と書くことはよく知られていますが、例えば、「ありがとう」は「カムオン(感恩)」、「さよなら」は「タンビエット(暫別)」なども、漢字が分かると、なるほどな、と感心します。

やたらと「0(ゼロ)」が多く並んでいて分かりにくいベトナム通貨の単位「ドン」は「銅」だそうです。

ハノイ(河内)」の旧名「タンロン」は「昇龍」、その龍が天から下りた海は「ハロン(下龍)」。

「ドンズー」運動は、「東遊」、さしずめ、「ルック・イースト」ですね。

だいいち、現行のローマ字表記のベトナム語は「クォックグウ(国語)」と言います。

それと、ベトナムには漢字から造ったベトナム独特の文字である「チュノム」も存在し、以前は使われていました。日本で言えば「笹(ささ)」「峠(とうげ)」「蛯(えび)」「嬶(かかあ)」のような国字です。(「エステ」は「躾」……と書くはずはありませんが。)

しかし、言語学的にはベトナム語と中国語はまったく違う系統の言葉ですから、長い歴史のうちに、中国文化が朝鮮半島や日本へと同様、ベトナムにも、大きな影響を及ぼしてきたことが分かります。

歴史的には、千年もの間、中国に侵略されてきたとベトナム人たちは言いますし、今も南沙諸島では、中越が何やらきな臭い動きをしていますし。しかし、漢語一つ取ってみても、中国文化は、周囲の地域にもきわめて大きな影響を与えてきたことは確かです。

この地域が、より円滑なつき合いをしていくためにも、教育の交流、若い世代の往来を増やすことで、理解を深めていくことは大切だと考えます。

*1:「韓国語」という表現だと大韓民国で使用される言語ということになってしまい、言語学的には適切でないので、「米語」とは一般に言わず「英語」と言うことが多いのと同じ理由で、それ以上の意味はありませんが、私は「朝鮮語」と呼びます。「朝鮮半島」も同じ意味合いで使っています。

*2:参考:“漢越大字典”ツカエルベトナム語字典 http://www.vinapark.com/language/hanviet/blosxom.cgi