日本留学の多様化に対応できる態勢も必要

中国のニュースを多く扱っているウェブサイト「サーチナ*1は、引用や再引用の情報が多いので、それだけでは参考にならないこともあるのですが、昨12日の「日本留学経験生かしたワインバー経営」は、北京在住の前明治大学講師の近藤大介さんによるオリジナルで、長いですが、なかなか読ませるコラムでした。*2

もともと出来の良い女性であった田茂彩は、自分が中国人であるといった帰属意識はほとんどなく、日本のサブカルチャーに惹かれて北京大学の日本語学科に入り、数か月で日本語能力試験1級に合格しました。どうしても日本のアニメやマンガのセリフを理解したいという一点が、日本語を勉強するエネルギー源だった、とのこと。

日本語学科を首席で卒業し、東大大学院に留学。記事には書いてありませんが、多分彼女は、日本政府奨学金留学生の大学推薦方式で奨学生として留学したのでしょう。そして、フランスから同じく東大に『源氏物語』を研究に来たフランス貴族の末裔、フィリップと知り合い、ワインに目覚めます。

詳細は、直接読んでいただくとして、このケースが物語るように、今日の日本留学の多様化は、北京大学から東大大学院といった、普通ならエリート・コースで、研究者にでもなるのではないかと思ってしまうような優秀な留学生でも、じつはアニメが大好きとか、ワインを勉強したいなどといった希望を持ち、それを仕事にしたいとか、他にも既成の概念では唐突すぎるような人生のコースを選ぶ可能性があるのです。

毎日、学生たちに接している日本の大学の教員たちだけでなく、事務職員ですら、予想しがちな既存の人生のコースとは異なる若者の、こうした人生の選択に接して大いに戸惑うのかも知れません。

国内の日本語学校の多くが、漢字圏から日本に留学し、大学などの高等教育機関への進学を希望するといった、いわば定型化した留学生の受け入れを大前提としてきています。

しかし、今日では、日本人学生ですら、大学を出たからといって、会社勤めのコースを選ぶとも限らず、大学と並行して専門学校にも行き、手に職をつけて独立したり、仲間と起業したりといった人生を選んでいることも決してめずらしくありません。

したがって、日本語学校も高等教育機関も、これまで以上に柔軟な留学生受け入れの態勢を整えるべきときに来ているのではないかと考えるのです。*3

*1:http://searchina.ne.jp/

*2:「<北京女人天下>日本留学経験生かしたワインバー経営・田茂彩」http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0712&f=column_0712_011.shtml

*3:7月12日に2回書いてしまったため、若干、加筆して、13日に移しました。