「語学留学」という位置づけ

先月、「留学の範囲」について*1と、「短期留学」*2について書きましたが、留学の形態の多様化にもっと着目し、より実態に沿ったプログラム、あるいは、需要を喚起するものを、さらに考えていってもいいでしょう。もちろん、「スタディー・ツーリズム」*3も、その一つの形だと思います。

日本人の海外留学を考えると、語学の学習を主な目的として留学している人がかなりいるわけですが、この分野は、従来、留学エージェントに任せっきりで、統計数字に、こうした人たちが含まれているのかどうかもはっきりしませんが、2008年のOECD統計による日本からの海外留学者数は、66,833人ですから*4、夏休みや春休み中などの短期の「語学研修」は含まれていないのではないでしょうか。

そもそも、語学の勉強に海外に3か月未満の期間、行くのは、「留学」の範疇には含まれなかったため、学校のプログラムとしては存在していても、文科省が所掌する留学の形態ではなく、旅行が含まれるというので国交省がその主催エージェントについて関係するといった程度だったのです。

極端な話、「電話一本、机一つで始められる仕事」と、かつて言われたような業界でしたから、その消長も激しく、昨日、雑誌などで派手に宣伝していたエージェントが、今日は倒産している、といったこともしばしば起きました。それへの反省もあって、実態の改善のために生まれたのが、一般社団法人海外留学協議会(JAOS)*5であったわけです。

ひるがえって、海外から日本への留学を見ると、やはり同様で、1989年以来の(財)日本語教育振興協会傘下の日本語学校を見ても、これまで、かなりの数の日本語学校が姿を消し、新たな学校が生まれていることが分かります。経営基盤が磐石である日本語学校は少数派であり、どこも経営には苦労しているわけですから、ひとつの産業としての日本語学校への留学を考える余裕がなかったと言ってもいいでしょう。

そこにきて、3.11の震災と原発事故が、日本語学校や日本留学分野に大打撃を加えました。

日本への「留学」に関わる日本語学校・大学など高等教育機関・支援団体・地方自治体・企業等々は、「留学」をひとつの産業としてとらえ、また、日本語だけ勉強したいという海外の人も支援できるような体制を整えることが必要です。

そして、「語学留学」は、日本留学の入口でもあり、日本ファンを作る大切な産業の一形態であるという認識を強めなければならないでしょう。大学などへの留学生の6〜7割は、日本語学校経由であるわけですし、加えて、近年の傾向として、進学目的でなく、日本の現代の文化やサブカルチャーに惹かれて日本語そのものを勉強しにやって来る世界の若者たちもいるわけですから。

「語学留学」を日本留学の重要なカテゴリーとして認識し、育てていくことは重要です。