高校生の留学が少なすぎるのではないか?

昨日の朝日新聞の記事*1に引用されていた高校生の留学者数が2004年以降、ガクンと減っているのを見て改めて驚き、再度、文科省の資料を検索してみました。

たしかに、母数の高校生数自体が減ってはいるのですが、例えば、高校生数と海外への留学生数の推移を見ると、2004年の海外への留学生4404人に対し全高校生372万1184人で、0.118%、2008年には3190人に対し337万4336人で、0.095%でした。*2

比率でも減少傾向が明らかなのですが、いずれにしても高校生1000人に1人が留学するかしないか、といった状態では、どうにも情けなく、また、不安だとしか言えません。

進学準備のために余裕がないとか、景気後退のため経済的に難しいとか、さまざまな背景があるのはよく承知していますが、しかし、昔ならいざ知らず、国境を越えて行き来する人たちが地球上にあふれている今日、将来を担う若い世代が、高校時代に1000人に1人も海外留学していないとなると、これは、この国の将来に不安を抱いて然るべき大問題なのではないでしょうか。いかんせん、日本は海外に依存しないとやっていけない国なのですから。

こうした大きな不安があってか、ようやく文科省も、その解消に取り組み始めたかの姿勢が見えるのが、6月30日に専門家会議がとりまとめたという提言で、報道によると、「中高生の実践的な英語力の向上のため、今後5年間で、留学などの海外生活の経験を持つ生徒を現在の約10倍の3万人に増やすべきだ」*3、つまり、今、1000人に1人程度の高校生の海外留学を100人に1人程度まで飛躍的に増やそうという提言のようです。

ただし、まだ、その詳細を見ていないので、何とも言えないのですが、日本人にとって、英語は必須な外国語の一つであるとしても、必ずしも英語だけに限る必要もない気がします。中国語や朝鮮語、あるいは、スペイン語などは、その素養があってもいい言語ですし、それら以外のアジアやアラブなどの言語も選択肢のうちにあって然るべきなのではないかと考えるのですが。

そして、それらの話される国・地域に高校生を留学させないと、いつまで経っても英米ばかりを知っていて、英米が大好きな日本人しか育たないのではないか、いつまで経っても、その他の世界のことは英語圏の人々のフィルターを通してしか見られない人間しか、この国に存在しないのではないかと私は恐れます。

今日、パレスチナの情報を生(ナマ)で取れるジャーナリストや研究者が、日本にいったい何人いるのでしょう。今、タイのタクシン派と意見を生で交換できる専門家が何人、この国いるのでしょう。こうしたことも、100年単位のヒトを育てる方策として国は考えるべきなのではないかと思うのです。

*1:地方からの留学 塾が応援 http://digital.asahi.com/20110717/pages/life.html 有料サイトです。

*2:高校生交流(留学等)の推進についてhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kokusai/007/shiryou/__icsFiles/afieldfile/2010/05/27/1293407_3.pdf

*3:「中高生の留学を10倍に 英語力向上で文科省会議」http://www.47news.jp/CN/201106/CN2011063001001053.html