秋入学は日本の大学を救うのか?-(1)
先に結論から書いてしまうと、残念ながら、日本の大学が秋入学に移行することと大学の国際化とは、あまり直接の関係はないだろうということです。
去る7月1日にマスメディアは一斉に東大が秋入学を検討し始める、という報を流しました。*1 どの報道を見ても、秋入学を検討する理由として、秋入学にすると日本人学生が海外留学しやすくなる、海外から留学生を受け入れやすくなる、という点をメリットとして挙げ、一方、就職活動へのデメリットを挙げています。また、入試時期は変更しないとのことです。
しかし、秋入学を「グローバル・スタンダードに合わせる」と東大は言っているのですが、いったい何を「グローバル・スタンダード」と見なしているのでしょう。*2
試しに、各国・地域の大学の授業がいつ行われているか、それぞれの大学のホームページなどを見てみたら、およそ次のようです。(順不同)
- 中国 9月初旬〜7月中旬
- 韓国 3月初旬〜7月中旬、8月末〜2月初旬
- 台湾 8月初旬〜6月下旬
- ベトナム 9月初旬〜7月下旬
- マレーシア 7月中旬〜5月初旬
- インド 6月〜3月だが、州によって異なるところも。
- タイ 6月〜10月、11月〜2月
- 米国 9月〜6月が一般的だが、セメスター制、3学期制、クオーター制など大学により、まちまちなので、いつ始まりいつ終わるかにこだわっても、あまり意味をなさない。
- 欧州 10月初〜5月末が大勢だが、国により、州により、地方により異なることも。
- 英国 地域により、大学により、まちまち。
- 豪州 1月下旬〜12月中旬
こうして並べて見てみると、たしかに秋入学のほうが、すんなりと日本の大学に入学できるケースも少なくはないとは思いますが、何か、海外の大学は秋に始まるといった「伝説」を固く信じて、たいへんな思いをして日本の大学の学年度を変更するほどの意味が、果たしてあるのかと考え込んでしまいます。
以上は大学の授業についてで、東大の案は海外の高校の学年度を念頭に置いていることは承知していますが、高校卒業後直接大学学部に入学するということは現実的ではないので、大学学部の授業の期間についての例を挙げてみました。2,800人ほどの留学生を受け入れている東大が、学部に留学生をいったい何人受け入れているというのでしょう。2ケタいるのでしょうか。
さて、話は東大に限ったことではありません。大学が提供する教育の中身や方法を、海外からの留学生が魅力的と感じるものにすることが、はるかに大切なことに違いないのです。
もし、十分に魅力あるプログラムを提供できるのなら、半年のブランクなどは、ことさらにどうというほどのことではないはずですし、むしろ、その期間を留学の準備や社会に出てから役立つことの体験にあてるのは意義があることと考えます。
こうした意味合いでは、東大の提案する「ギャップ・イヤー」は学生の人生に有用ではないでしょうか。(つづく)
*1:「東大、秋入学になるかも? 検討チーム発足」 2011年7月1日12時21分 朝日新聞 http://www.asahi.com/national/update/0701/TKY201107010282.html
*2:「たとえ『9月入学』導入しても… 大学国際化を阻む壁」 2011/7/19 7:00 日本経済新聞 http://www.nikkei.com/life/living/article/g=96958A90889DE1E0E3E2E6E1E2E2E3E1E2E5E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;p=9694E3E6E2E4E0E2E3E2E4EAE6E2