秋入学は日本の大学を救うのか?-(2)

昨日の続きです。

日本への留学生受け入れについて見ると、大学が秋入学に移行しても、大きな効果は見込めないだろうというのが、昨日の結論でした。

では、日本人学生の海外留学についは、どうなるでしょうか。

この数年、日本人の海外留学が減っていることを嘆く論調が多いのですが、日本人学生が海外留学に消極的なように見えるのは、べつに海外の大学の入学時期がずれているからではないでしょう。

海外留学が減っていると言われる原因を考えてみると以下のことが挙げられるのではないでしょうか。

  1. 18歳人口減により絶対数としての学生数が減っているので、一見、あまり留学しなくなったように見える。
  2. 留学先が多様化していて、以前のように米国一辺倒ではなくなっているのに、ワシントンポスト紙が危機感をあおり、それに追随する日本のマスメディアの論調が現れた。
  3. 日本国内で勉強できることが多くあるため、海外留学の需要が以前ほどは大きくはなくなってきている。
  4. 長期の景気低迷で、海外留学する経済的余裕のある日本人学生が減った。
  5. 日本留学の振興に比べると、日本人学生の海外留学には政府は力を入れて来なかった。
  6. ごく最近までは、日本企業が国際人財を積極的に求めていなかった。

つまり、どの点を取っても、入学時期のずれの問題ではないのです。

したがって、入学時期を秋にしたところで日本人学生の海外留学が大幅に増えるということは期待薄だと考えます。それよりも、海外留学のための奨学金やプログラムを、さらに増やすことを考えるべきでしょう。

もう一つ、秋入学は就職のデメリットだと考えられているようですが、これも違うのではないでしょうか。

日本独特の制度として、大学学部生なら3年の夏くらいまでに就活により内定が出る、という企業による学生の「囲い込み」が批判を受けつつも存続してきた背景には、大手の有名企業への就職にプライオリティーを置く、「寄らば大樹」的な学生の大企組織依存傾向と、大学教育にはほとんど何の期待もしていない企業との利害の一致があったわけですが、それも、近年の景気の低迷、海外進出の激化、海外人財の採用、人財の流動化などにより揺らいできています。

多くの企業は、生き残りをかけて、変革せざるを得なくなり、新規採用も春とは限らす、必要に応じて常に採用する企業が増えています。

こうした状況を考えれば、秋入学により卒業時期が6月末くらいになるということは、就職においても、とくに何の支障もないことは容易に想像がつきます。今日、企業も、より優秀な人財を春に限らず、いつでも新規採用したいのです。

大学の秋入学を必ずしも否定するものではありませんが、大学も企業も、より柔軟に制度を運用すれば、多大な手間ひまをかけて秋入学に移行させなくても、中身さえきちんとあれば、学生も社員も確保できると考えるべきなのではないでしょうか。

それよりも前に、急いでやるべきことは山積しているはずです。(おわり)