日本人留学生に海外で日本語や文化を教えさせる?!

去る9月29日の読売新聞によれば、文科省は、アジアを中心とした海外の大学に留学する日本人学生に、現地の学校や企業で日本語や文化を広める指導役を担わせる制度を新設する方針を固めたとのことです。*1

各国で「知日派」となってくれるような人材を育成するのが目的で、かつ、教えた経験を単位認定したり、授業料免除にしたりして、日本人学生に海外留学を促す狙いもあるとのこと。

日本と海外の大学間の交流協定の中で位置づけ、文科省は日本の大学支援のため、来年度概算要求で人材育成などに重点配分する特別枠「日本再生重点化措置」に、大学間の交流経費21億円を盛り込むそうです。

日本人留学生は、現地の大学と連携する中学校や高校で日本語や文化歴史を教えたり、日本企業で就業体験をしながら現地スタッフに日本語・文化を広めたりする由。文科省は、こうした社会経験は留学生の就職活動に有利に働くだけでなく、現地の人材育成が必要な日本企業にも利点があるとみてい見ているそうです。企業や大学には授業料免除などで留学生を資金援助するよう求める方針とのこと。

趣旨はたいへんい良いと思いますが、いくつか、事前に確認すべきことがあると考えます。

「学生」とひとくちに言っても、学部学生、大学院生の違いによっても、あるいは専攻分野によっても、教えられることは変わるでしょう。また、学生のモチベーションはどうなのか、留学時に教えるべき資料などを持ち合わせているのか、何を教えるのか……。

報道の情報だけだでは詳しいことは分かりませんが、少なくとも大学間交流協定で海外の派遣される日本人学生であるということですから、専攻分野はさまざまです。その学生たちに中学校や高校で日本語や文化・歴史を教えたり、日本企業で就業体験をしながら現地スタッフに日本語・文化を広めたりするということなのです。

しかし、そうすると詳細については大学任せということになりそうですね。

日本語教授法は事前に基礎くらいは習っていくのでしょうか。日本語や文化・歴史の教材はどうするのでしょうか。歴史認識の違う国もありますから、歴史を教えるのはなかなか微妙な問題を含みます。統一した教科書を作るのですかね。

日本企業での就業体験というのは日本人留学生のためなのでしょうが、それはインターンシップとしての位置づけなのでしょうか。受け入れ企の負担に企業の理解が得られるのでしょうか。現地スタッフに日本語・文化を広めたりする力になればいいのですが、やや不安もないではありません。

21億円も予算を組んで、さらに企業や大学には授業料免除などで留学生を資金援助するよう求める方針というのもよく分かりませんが、果たして予算的にはどうなっているのでしょう。相当な人数が対象のように思えますが、そんなにアジアなどに留学するのでしょうか。

誤解されると困るので、ここに記しておきますが、こうしたことはどんどん試みるべきだと私は考えていますし、その意味で大いに賛成なのです。ただ、報道だけだと、あまりに大雑把で、全体像が見えてこないので疑問を列記したまでです。

上手くいくように祈っています。

追記

上を書いてから見つけた10月2日のNHKテレビのニュースによると、この件の一部を次のように伝えています。

海外の大学での単位取得や帰国後の就職についてアドバイスできる留学事情に詳しい人材を大学が学内に配置したり、語学を担当する教員のレベルアップに向けた研修をしたりする場合、その経費を負担します。文部科学省は全国60の大学を支援することを想定し、120億円余りの予算を確保したいとしています。*2

60大学に限定し、予算額が120億円あまり……。

仮に 5年間の総予算額が120億円とすると年額24億円。60大学で割ると1大学当たり4000万円。これは、1人月額10万円×10か月分=100万円なら1大学で40人分ですから、当たらずとも遠からずの数字でしょうか。

まだ、よく分かりませんが、そのうち、はっきりしてくるでしょう。

いずれにしても、中身は大学に丸投げでお任せなら、効果は期待通りとはいかない恐れもあります。

*1:留学中の邦人学生、「知日派」育成に協力を http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110929-OYT1T00888.htm

*2:留学生減に歯止め 大学支援へ http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111002/k10015980511000.html