組織は疲労する

国際教育交流とは関係なさそうなタイトルですね。

例えば、大組織には、ほうっておくと沈滞ムードが漂い、まだ組織が若かった頃の活力が失われてしまう傾向が見られます。企業なら業績が停滞しがちになります。役所なら、何も革新が行われず、極端な場合、30年前と同じ仕事のやり方でやっていても内部の人は誰も何の疑問も抱かなくなります。

今回の震災と原発事故への対応には、役所でも東電でも、組織疲労が起きているのではないかと思われることが散見されます。

効率や成果ばかりを職員に求めすぎると、うつ病が蔓延しがちです。これは、どの組織でも一般的傾向かと思われます。そうなると、仕事は後手後手に回り、時代の要請に応えられなくなります。組織疲労の典型的現象の一つでしょう。

何か問題が起きると、制度を変革し、整備しようとします。それに従って、ますます制約が増えて、時代に対応できない組織となっていきます。

かつて、高度成長時代の日本の組織は、さまざまな制度が未整備でしたが、比較的自由で、組織内で人は柔軟に発想し、行動できる状態であったと思われます。そうでないとやっていけなかったからです。

今、アジアの組織を見ていると、あまり制度的には整備されているようには思えません。ちょうど、戦後の日本の組織のように若い組織なのです。そして、比較的自由に、柔軟に、いろいろなことにチャレンジしています。

あまりに制度にがんじがらめになってしまうと、内部の人たちに伸び伸びとした発想がなくなり、生き生きとした雰囲気は消え、結果として仕事の効率は次第に低下します。

組織内には、いろいろな考え方、仕事の進め方の人がいるものです。決められたことを忠実に実行する能力に長けた人もいます。決められたことをするのは苦手でも、ユニークな発想で他の誰も思いつかないオリジナルなアイディアを出すのが得意な人もいます。人には、それぞれ個性がありますから、それが当然でしょう。そして、組織にとっては、それらをうまくコントロールできることが、じつは大切なのです。

で、国際教育交流分野ではどうなのかということです。

昨今の大学では、教職員を以前ほどには多く抱えるのが難しくなり、国際交流部署でも、非常勤職員や派遣職員が多く見られます。東京のある私大では、大学全体で見ても、以前、教員と事務職員の比率が1:2であったものが、最近では逆転してしまい、さらに、教員にも非常勤が増えているとのことです。

18歳人口が減少一途の日本では、効率を考えれば、ある程度、致し方ない面もあるのは、十分、理解していますが、大学経営者が考えたことを、現場に、どこまで徹底できるのか、不安であるのは確かでしょう。

そして、国際教育交流の分野では、じつに属人的に仕事が進められることが多いのは、意外かも知れませんが事実なのです。世界の大学の国際交流分野の教職員たちは、国境を越えて、個人的にも親しく、ツーカーで仕事をしていることが多いのです。したがって、個人的ネットワークの維持が大切で、疲労を抱えた巨大な組織でローテーション人事をしていては、思うように仕事が進まないことは、ある意味、当然なのです。

あなたの組織は、大丈夫でしょうか。疲労していませんか?