石原「天罰」発言

石原都知事が震災の後に、「日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う」と述べて、大顰蹙を買ってから、今日で1か月経ちます。(そのわりに、43.4%の得票率で4期目の当選を果たしました。支持層は、比較的高齢者に多かったようです。)

石原氏は「アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等。日本はそんなものはない。我欲だよ。物欲、金銭欲」「我欲に縛られて政治もポピュリズムでやっている。それを一気に押し流す必要がある。積年たまった日本人の心のあかを」とも話しました。

最近、石原氏は、日本人の「我欲」が横行しているという批判を繰り返しているのですが、それを津波で一気に押し流す必要があると述べたわけです。

一見、もっともらしい話かも知れないのですが、どうも、誤解を招く表現で、さすがに後で陳謝したようです。石原氏は、べつに被災者や被災地に対してそう言った訳ではないようで、「被災者の方々はかわいそうですよ」とも述べていますが、いかんせん、タイミングが悪かったことは否めません。

私は石原氏には以前から批判的ですし、都知事選でも誰に投票すべきか困ったのですが、彼にはもちろん、投票していません。

にもかかわらず、この「天罰」発言については、私たちは、もう一度考えてみる必要があると思うのです。

日本は、戦後、ずっと右肩上がりに経済成長してきました。もちろん、オイル・ショック、バブル崩壊リーマン・ショックなどがありましたが、モノとカネの豊かな時代に生まれ育ってきたことには変わりないのです。何でもあるのが当たり前になってしまっているので、電気、ガス、水道が止まってしまったら、どうしていいか分からない。幼い子どもやお年寄りなどは、即、生命さえも危険にさらされることになります。

途上国に行くと、そのことをヒシヒシと感じます。日々、食べるのに精一杯で、乳児死亡率も高く、平均寿命も短く、医療も充実していない。インフラ整備は十分でなく、交通やコミュニケーション手段も未発達で、仕事も捗らない。しかし、人々は生き生きと生活しているように見えます。家族のきずなもしっかりしていて、濃密な人との交わりの時間を大切にしている。

高度成長時代、バブル経済を経て、日本人は何か大切なものを見失ってきたような気がするのです。アジアに行って、一昔前の日本を見るようだと安堵感を覚える日本人が多いのは、そのせいかも知れません。

そして、アジアに学ぶことは多いと、私は常に思うのです。その意味で、留学生も含めたアジアとの交流を大切にしていきたいものです。

「天罰」発言はどうかとは思いますが、今日までの私たちのあり方を、今回の震災や原発事故で、今一度、振り返ってみるきっかけとすることも大切なことではあると考えます。

それにしても、震災の被災者の方々が一日も早く、通常の生活に向けて立ち直れるような支援策が行われるように、また、原発事故が一刻も早く収束するよう願います。私にできることは、義捐金を出したり、意味のある情報を関係者に提供し続けることくらいではあるのですが……。