ホーチミンのドンズー日本語学校

ホーチミンで、半年前にお訪ねした日本語学校に、昨日も、ご挨拶に伺いました。

そのうちの一校が「ドンズー日本語学校」です。

「ドンズー」とは漢字では「東遊」と書き、20世紀初めのベトナム民族主義運動家ファン・ボイ・チャウ(1867-1940)の「ドンズー運動」に由来します。

1883年にフランスの保護国にされてしまったベトナムでは、日露戦争の影響もありチャウを中心とした民族主義運動家たちは反仏独立の秘密結社、「維新会」を1904年に結成します。

チャウは、日本から武器援助をしてほしいと考え、1905年に中国経由で来日したのですが、武器を日本から支援してもらうのは無理だと諭され、大隈重信犬養毅などと知り合います。彼らから人材育成がベトナム独立には重要だと説かれ、チャウは日本への留学生を送り出す「ドンズー運動」を開始します。1908年には留学生200人以上が日本に来たと言われます。

しかし、ご承知のように1907年には日仏協約が結ばれ、フランスは日本にベトナム人留学生の取り締まりを要求。1909年には日本政府からベトナム人留学生に国外退去が命じられ、帰国者や亡命者が相次いで、ドンズー運動は失敗に終わりました。チャウも日本に失望して香港に拠点を移します。

このような歴史を踏まえて、日本に学ぶベトナム人を増やそうという理念に基づいた日本語学校が1991年創立の「ドンズー」であるわけです。現在、学生は一時の5,000人から急激に減って約2,000人、これまで600人ほどの留学生を日本に送り出してきています。日本語離れは他の学校にも共通だとのこと。やや心配です。

校長のグエン・ドック・ホーエ先生(写真)はたいへんな人格者で、日本の留学生政策にも時に辛辣です。

こうした優れたリーダーのもとに、これからも日本留学生や日本語を理解し、日本をよく知る人たちがベトナムにも、また、さらに増えていってほしいものです。