大学や日本語学校は、震災後、適切な情報を海外に発信しているか?

震災後、外務省などが適切な情報を海外向けに発信しているかどうかは、やや覚束ないということを昨朝、書きましたが、では、留学生を受け入れるべき大学や日本語学校は、どうなのか、ウェブに限って見てみましょう。

国立大の例として、東京大学のホームページを見ると、英語ではフロント・ページから震災の情報がかなり豊富に盛り込まれています。http://www.u-tokyo.ac.jp/public/anti_disaster_20110311_e.html ただし、中国語、韓国語のページには震災情報は見つけられません。

もう一大学、渦中の東北大学では、さすがに震災関係の情報はホームページに豊富で、英語、中国語のページにも基本的な情報は入っていますが、韓国語の情報は見つけられませんでした。http://www.tohoku.ac.jp/english/

私学ではどうでしょう?

早稲田大学では、外国人留学生・研究者向けと協定校向けにページを設けて必要な情報は盛り込んでいますが、中国語と韓国語のページには英語の情報へのリンクがあるだけです。http://www.waseda.jp/eng/em/geje/

明治大学ホームページの英文を見ると、ほぼ必要な情報は載っていますが、韓国語、中国語にはありません。

京都まで行くと、緊迫感はない感じで、立命館大学では、英語には基本的情報がありますが、中国語のページには何もありません。http://www.ritsumei.ac.jp/eng/html/earthquake/

大学では、およそこんな感じです。

では、震災による留学生減が最も経営を直撃しそうな日本語学校ではどうでしょう?

震災直後から、とくに原発事故に焦点を絞って専門家に監修してもらった情報を積極的に発信し、他の日本語学校や大学にも提供してきた東京のカイ日本語スクールのホームページでは、英語、韓国語で、かなりきめ細かい情報を出しています。http://www.kaij.jp/earthquakeinfo/

同じく、東京のインターカルト日本語学校では、カイ日本語学校作成の原発事故解説の日本語と英語のページにリンクしています。http://www.kaij.jp/pdf/Accident_at_Fukushima_Nuclear_Power_Plant_jpn.pdf

また、東京の赤門会日本語学校は、「日本への渡航に関する各国の反応」などをまとめて、最新の情報を提供するよう努めている様子がうかがえます。中国語版 http://www.akamonkai.ac.jp/chinese/files/housya2.pdf

西に行って、神戸のコミュニカ学院日本語学校では、多言語の震災情報のリンクを集めていて、こうした方法もあるなと納得させます。http://www.communica-institute.org/disasterInformation.html

こうして見てみると、大学では温度差があるものの、留学生が多い大学では少なくとも英語での情報提供に努めているようですし、日本語学校では、より深刻に事態を受け止めて、多言語での情報提供に努めている様子が見て取れます。

留学生や研究者が来なくなってしまうことは、とくに日本語学校にとっては死活問題にもつながりますから、ある意味では中央官庁よりも真剣に取り組まざるを得ない問題であるということがよく分かります。

海外への発信力が弱いと言われ続けてきた日本ですが、この震災をきっかけに、発信力強化も、ぜひともしていきたいものです。

阿吽(あうん)の呼吸で分かり合ったり、「オレの目を見ろ、なんにも言うな」で意思が通じたりすることは、日本人同士ですらほとんどあり得ません。ましてや、対外的には、まず、言葉にして説明することが、最低限、必要なのです。