9割強が「今後も日本に残る」−外国人を一時帰国に走らせたものは?

震災後、留学生の全体のほぼ1/3である6万人が日本から出たと伝えられていましたが、NPO法人 国際留学生協会が行ったインターネットによるアンケート調査では、9割強が日本に残ると回答しているということです。

調査は無記名回答で、回答数は392件。調査対象は日本で生活する外国人や留学生で、一時帰国中の者も含まれるとのこと。全体の6割が学生で、4割が既卒あるいは社会人。

一時帰国中の、どういった人たちとどう連絡したのかなどの詳細も分からず、果たして的確なサンプリングをしているのか、調査実施時期と期間はいつか、など、調査の詳細が不明なため、多少の幅をもって見るとしても、9割強が「今後も日本に残る」と回答しているというのは、うれしいことです。

それによると、今回の災害で困ったことは、「携帯電話・電話の不通」(57%)、「電車の運休・運行本数の減少」(44%)、買占めなどによる「食品・飲料水の不足」(24%)、「計画停電の開始時刻・終了時刻が予測できない」(19%)など生活上の困難を挙げる回答が多く(複数回答)、また、「就職活動・選考活動の遅れ」(32%)を挙げた人も少なくありません。

こうした面では、日本人の若者とそう変わらないかも知れません。

ただ、日本人とは違うと思われる点は、「災害時に頼れる身近な人はいるか」との問いには9割が「いる」と回答したものの、その内訳は「知人・友人」が76%、「家族・親族」が58%(複数回答)で、必ずしも近隣に住んでいるとは限らず、地震に遭遇して、「一人暮らしの留学生にはどうすることもできなかった」と、外国人住民への地域のセフティー・ネットワークが足りないことがうかがえます。

災害に備えての日ごろからの対策は、6割が「していない」と回答していて、今回初めて地震を体験した留学生は、「地震に慣れていない留学生のために、大学等で学生のための地震対処マニュアルがあれば助かる」と、子どものときから多くは何らかの訓練をされてきている日本人とは別の対応が必要であることを示しています。

その他に、「母国の家族や親戚からの心配が激しく、説得するのに疲れた」という回答が目立ち、「日本での情報と母国からの情報」には違いが「ある」との回答が73%で、「原発事故の問題を母国のほうが深刻に報道していた」など、海外の「過大な報道」を指摘する声がありました。また、「日本の情報は遅く、政府の情報は曖昧で信用できない」など国内の情報発信のありかたを疑問視する声も多かったとのことです。

地震についての情報源は、「日本の情報源」(67%)、「日本と母国・第三国の両方」(24%)と回答。インターネットとテレビからの情報収集が圧倒的に多かったとのこと。

日本の政府やメディアによる多言語の情報発信はまだ少なく、日本語の情報だけでは、外国人には十分に情報が伝わらず、また、母国のメディアの過剰反応的な報道にしか触れられない国の家族は不安が増幅され、外国人の一時帰国に拍車をかけた可能性が大きいと国際留学生協会も分析しています。

帰国者の多くは、あくまで一時的な退避をしたと考えていいようで、「今回の災害を機に今後の活動場所についての希望は変わったか」との問いに対しては、7割が「変わらない。引続き日本で勉強・仕事を続ける」と答え、その理由は「日本が好きだから」、「復旧の力になりたい」、「災害を通してやはりすばらしい国だと確信した」、「日本の力を信じている」など、日本への信頼と復興への期待を語る声が多かったということは、日本人にとってはうれしいことです。また、「日本で勉強・仕事を続けたいが不安もある」との回答は23%で、合わせると9割強が日本での生活を続けたいと考えていることが分かったとしています。

東日本大震災 外国人意識調査」(国際留学生協会実施) http://www.ifsa.jp/index.php?1104-top