留学生就職支援の課題

留学生のための就職支援が脚光を浴びるようになったのは、ほんのこの数年内のことです。経産省が中心になって進めた「アジア人財資金構想」が、外国人の「"高度"人財」を育て、日本の産業界にも貢献する知的労働力として考えるようになったことが大きなきっかけでしょう。

それに先だって2006年1月に東京で開催したシンポジウム「グローバリゼーション時代の留学生の就職支援」http://www.tiec.jasso.go.jp/whatsnew/whatsnew_disp.php?RecID=85 では、日本の労働市場に外国人が参入することによる社会の多文化化などが議論されました。

また、「アジア人財資金構想」の事業が実施されているさなかの2007年12月に神戸で開催したシンポジウム「より有効な留学生の就職支援を考える」http://www.jasso.go.jp/s_kobe/shinpo_houkoku.htmlでは、まさに進行しつつあった留学生の就職支援体制の拡充のため、大学などの教育機関、企業、関係省庁、地方自治体、支援団体、また、留学生、元留学生たちが、より現実に即して検討されました。

少子化、人口の減少にともなって注目されだしたのが外国人労働力なのですが、単純労働力は海外からは入れないタテマエの日本ですから、現実には「研修」に名を借りた安い労働力の導入はあるものの、政策的には留学生などの一定の教育を受けた外国人を労働力として入れるという方針で来ているわけです。役所では、こうした人たちを「"高度"人材」と呼んでいます。私は何だか偽善的なにおいがするので、止むを得ない場合にしか使わないことにしていますけれど。

日本企業でもグローバル化を進めるためには、例えば、日産、ユニクロなどでは社内の公用語もしくは会議用語を英語にするなどの措置を取っていますし、外国人の採用も次第に増えてきています。留学生の日本での就職希望者は6割前後、実際に就職する人は4人に1人程度となっていますし、また、日本企業がアジアなど海外に進出することも増えているのはご承知のとおりで、日本人が外国人と同じ職場で働くことも決してめずらしくなくなっています。

こうした状況下での留学生の就職支援ですが、課題は山積です。

大学などの高等教育機関の組織内での支援体制が、まだ必ずしも現実について行っていないことも少なくなく、留学生担当部署では就職にはタッチせず、就職支援部署では留学生への支援に力が入っていないという大学、とくに国立大学が結構あるようです。

また、企業の側にも留学生を採用したくても、そのノウハウの蓄積がなかったり、いったん採用してしまってから、その研修や待遇に苦労するといった話もよく耳にします。

このような中で、「アジア人財資金構想」のプロジェクトは大学と企業を結ぶ支援策としても意味のあるものでした。ただ、上述のような大学の支援体制や企業の課題はいまだに残されたままです。

これらを引き続き改善に向けて強力に推進していかないことには、今後の留学生就職支援は、難航することは間違いないのではないでしょうか。

ちょうど、厚労省の名古屋での留学生就職フェアのポスターがネット上に発表になっていますが、何やら白人男性が仁王立ちになっていて、この実態とかけ離れたセンス、大丈夫ですかね……。http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001c1de-att/2r9852000001c1ev.pdf