日本の国際教育交流に「マーケティング」は存在するのか?


人気の『もしドラ』は読んだことがないので、それと関係あるのか、ないのか、想像もつきませんが、日本の留学生受け入れ戦略を見ていると、というか「戦略」というものが各教育機関や政府にも、あまり明確に存在しないような気もしています。したがって、「マーケティング」も存在するのかどうか不確かです。

日本では、留学生の受け入れは奨学金を用意しなければならない、お金のかかるものだと考えられがちです。しかし、ご承知のように欧米では、留学生の受け入れによって、どれだけの経済効果がその国・地域にもたらされるかに関心の中心があり、当然のこととして「教育産業」という言葉が使われますし、そのための「マーケティング戦略」が議論されます。中国でも同様です。

日本では、留学生受け入れも「国際貢献」の一環と考えられ、「知的国際貢献の発展と新たな留学生政策の展開を目指して−ポスト2,000年の留学生政策−」という報告がアジア通貨危機から2年後の1999年に「留学生政策懇談会」から出されています。http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/015/toushin/990301.htm 「10万人計画」の節目の年に、では、21世紀にはどうするのか、という方向性を示さなければならなかったからと言えましょう。

もちろん、「世界の平和、安定そして発展なくしては、海外に資源や市場の多くを依存する我が国の安定と繁栄はありえない」といった同懇談会が示した認識は正しいと考えます。

しかし、「我が国が留学生を迎えることは、外国人への教育研究の機会の提供とこれを通じた日本人との交流を促進し、このような人材を育成するための国際社会への貢献であり、いわば知的国際貢献と呼ぶことができよう」と言ってしまうと、本当に貢献できるのかな……、と私は最近では思ってしまうのです。

これは、12年前のことですから、2008年にはリーマン・ショックがあり、2011年には震災があったので、この間に日本と世界各国・地域との関係はかなり変化しましたし、中国やインドを始めとするアジアの経済も目覚ましい成長を遂げていますから、当時の日本の世界へのスタンスもかなり大きく変わってしまったことは事実だと言えるでしょう。

したがって、日本がこのまま主にアジアからの留学生を受け入れていく考えがあるのなら、まずは、世界との共存をどう図っていくのかといった理念を示し、それに沿って、きちんとしたマーケティング戦略を立てて、実行していく必要があるはずなのです。しかし、来るのをたんに待っている部分が多すぎはしないでしょうか。各セクターの有効な連携があるのでしょうか。

中央官庁の仕事の領域は、分野ごとに多数の省庁に分かれていますが、こと実際の国際教育交流事業では、縦割りの壁を取り払って「ワン・ストップ・センター」方式でことに当たっていかなければならないのは自明のことです。そして、こうしたことが旧総務庁に指摘されて10年以上は確実に経っていますが、未だにその具体的な動きはありません。

政府に「事業仕分け」を強力に推進した勇断があるのなら、「ワン・ストップ・センター」方式で国際教育交流を進めていく英断にも期待したいです。

海外広報、学生のリクルート、海外と国内の日本語・予備教育のネットワーク化、予備教育と専門教育の連携、インターンシップの改善、就職支援まで、入口から出口までの一貫性を持たせたシステムの構築が、今ほど求められているときはないと考えます。