EPAと留学生受け入れとは、違うように見えるかも知れないけれど

日本は、この9年ほどの間に遅まきながら経済協力協定(EPA=Economic Partnership Agreement)を諸外国との間で結び始めました。

ご承知のように、これは由貿易協定(FTA)により関税の撤廃など、通商上の障壁の除去をした後、2国間での経済取引の円滑化、経済制度の調和、サービス・投資・電子商取引などの連携の強化や協力の促進を図るための経済条約です。

2002年以降、今日までに日本は、シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ・タイ、インドネシアブルネイASEAN包括・フィリピン、スイス・ベトナムの順にそれぞれ条約を締結し、発効させてきています。インド・ペルーとも条約を今年、締結し、現在、発効待ちです。

FTAは、「モノ」や「サービス」の移動が自由に行えるのですが、EPAでは、「ヒト」の移動、知財保護、投資などが自由に出来るために、急速に経済関係は緊密になることが期待出来るわけです。

EPAにより、インドネシアとフィリピンから看護師と介護福祉士を目指す人たちが来日したことは、かなり知られていますが、昨年、試験が日本語で漢字が多く看護師試験の受験者が苦労したため、厚労省は難しい言葉を簡単な表現に改めるなどして、この2月実施の試験では、16人が合格(外国人の合格率は昨年約3%、今年は4%)しています。3年間の滞在期間中に国家試験に合格すれば、日本で働き続けることが出来るようになります。

さて、このように近い将来、必ず人手が絶対的に足りなくなることが分かっている分野の職業に外国人を受け入れるようになると、このブログでもときどき触れている欧州の移民受け入れと多文化主義の問題と似た状況が生まれてくることが十分に考えられます。

日本で長期に仕事をすれば、かなりの確率で日本人との結婚、子どもの出産、教育…といった社会的課題が生まれてくるからです。その意味で、留学生を多く受け入れ、かつ、今の政策のように日本企業に就職する道を開いていくことも、同じ課題を日本社会は抱え込むことになります。

近年に至り、情報・モノ・カネ・ヒトなどが自由に行き来出来るようになってきていることは良い面が多いのですが、やはり、相互の社会が、さまざまな社会的課題を抱えるようになることでもあるわけです。

多くの可能性を考えて、この経済的自由が、何をもたらすかを十分に検討していきたいものです。