「スタディー・ツーリズム」は、どうだろうか?

一昨日、このブログの最後の部分に書いたことにいくつかの反応をいただいたので、もう少し、説明しましょう。

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、3.11の後、今年4月の海外から日本への訪問者は、昨年同月比で、62.5%減の29万6千人に。5月には、同50.4%減の35万8千人となりました。緩やかに戻りつつあるのかも知れませんが、激減と言うほかはありません。*1

震災直後から、海外では津波被害の悲惨な映像が繰り返し流されたり、日本全体が被災したかのような誤った不正確な報道や、原発事故の放射線もれについても恐怖をことさらに煽るような報道がされていました。

したがって、この時期に海外から、あえて日本に来ようという人が減るのは当然のことではあるのです。ただし、福島原発の周辺を除いて、それ以外の地域にとくに危険はないことは私たちは承知していますが、海外にいて必ずしも正確な情報を得られない人たちにとっては、やはりまだ怖いと思うのも無理からぬことであるかも知れません。

また、このブログにも度々書いてきたように、日本国内の日本語学校や大学に留学しようという人たちも減っていて、この秋に日本語学校に入学する留学生は昨年比7割減という予想も出ています。

日本への留学生の9割強はアジアから来ていて、大学に入学する留学生の6〜7割は日本語学校経由です。

したがって、日本語学校に入学する留学生を増やさないことには、大学に入学する留学生も減り、日本企業が期待するような「高度人材」も減ります。そして、日本をよく理解する知日派も世界から減ります。これが日本と日本人にとっても、どれだけの損失かということは、あまり深刻に考えられてはいないように思えます。

こうした、日本への旅行客の激減と留学生の激減の恐れを少しでも和らげるために、ともかくも短期間でもいいので来てもらい、日本語の日常会話や日本文化・社会などについての基礎知識を身に付けてもらい、そして、日本各地を直接見てもらい、体験し、今後、日本に長期間留学したりするきっかけをつくってみてはどうだろうか、というのが、この「スタディー・ツーリズム」の提案なのです。

比較的参加しやすい3週間程度のプログラムとし、インテンシブに日本語・日本文化を日本語学校で学び、その後、地方などへの旅行をして、地域の人たちとも触れ合う機会を体験するというものです。

欧州などでは、こうしたプログラムは昔からやっていましたが、日本では、各セクター間の連携が弱いのと、どうしても経費がかさむというので、なかなか難しかったのだと考えます。

震災復興という面を考えれば、政府からの助成金が交付されれば、こうしたプログラムも成り立ちやすくなるのではないかと思いますし、それにより、存立の危機に直面している日本語学校や観光業なども多少とも潤うことになります。

だいいち、このプログラムに参加した人たちから数多くの生きた情報が広められ、日本に関心を持つ人たちが世界に増えることにもつながるのです。参加者には、それぞれの母語で、ツイッターフェースブック、ブログなどを通じて、今日の生きた日本の情報を発信したもらうのです。これは、日本政府が多額の経費をかけて広報するよりも、はるかに効果的ではないかと考えます。

*1:統計報道発表資料(訪日外客数/出国日本人数)http://www.jnto.go.jp/jpn/tourism_data/data_info_listing.html