英語によるプログラムなら国際的に強いのか?

日本への留学生を増やすためには、英語によるプログラムを増やせばいい、という主張は以前からあります。

たしかに、欧州の大学を見ると、英語によるプログラムが増加する傾向にあるようです。

例えば、オランダ政府の国際教育交流団体であるNufficの昨日の発表によれば、5年前には外国人留学生の率が7%であったものが、先学期には10%に、つまり大学生14人に1人だった留学生は、10人に1人に増加しているとのことです。

なお、オランダでは、大学教育(WO=Wetenschappelijk Onderwijs)は、研究中心の大学(universiteit)で行われ、政府の助成によるWOの教育機関は14校あって、総合大学、工学や農学の大学などがあり、これら以外にも、政府からの助成を受けない公認校もあります。

また、高等職業教育(HBO=Hoger Beroepsonderwijs)は、職業資格を取得し、実務に役立つ知識や技術を身につけたい学生が学ぶ機関で、政府の助成を受ける45校と、公認校60校があります。これらHBOの教育機関では留学生の増加率は小さく、2006年には6%だったものが、現在は6.5%にとどまるそうです。

いずれにせよ、合計で61か国から8万1700人がオランダに留学中ということになります。

留学生を出身国別に見ると、いわゆる「BRICs」(ブラジル、ロシア、インド、中国)からの留学生数が増えていますが、これは、Nufficがこれらの国での留学振興策を進めているからということです。

そして、オランダは、計1,500の英語による教育プログラムを、Nufficのウェブサイト www.studyinholland.nl を通じて振興しているということです。*1

以上はオランダの例ですが、欧州ではエラスムス計画の実施のために欧州内の学生を引きつけようと英語によるプログラムの開拓に力を入れてきています。北欧諸国やドイツでも、かなり早い時期から英語によるプログラムを開始していました。

ただ、この状況と日本とをそのまま引き比べるというのは、どんなものでしょう。

日本への留学生は、90%以上がアジアからであり、欧州で英語が通じる程度にはアジアでは通じていないことと、仮に英語がかなりの程度上達した学生の場合、英語圏への留学を考えがちであるということだけを考えても、英語による授業によって留学生をより多く引きつけようという考え方は、少し違っているのではないかと思うのです。

また、現実問題として、理工系の大学院などは別として、学部教育をすべて英語で行うというのは、日本の大学の現状を考えれば、それに対応できる教員を揃えるだけでもかなりの負担になりますし、無理をせずに、できるところから部分的に進めるのが現実的ではないでしょうか。

それに、だいいち、せっかく日本に留学しながら日本語をきちんと習得できず、日本人との親しいコミュニケーションもままならないといった留学生が増えることが、日本を知り、日本人と友人・知人になれるはずの貴重な機会を、留学生が逸してしまうことなるとすれば、留学生と日本人双方にとって、じつにもったいない損失だと思わないでしょうか。

*1:Percentage of international students in the Netherlands continues to rise (15 Aug 2011 Nuffic Homepage) http://www.nuffic.nl/home/news-events/news-archive/2011/august/percentage-of-international-students-in-the-netherlands-continues-to-rise