豪州への留学生数の減少傾向の原因とは?

豪州で留学生の明らかな減少傾向が見られます。

このほど、豪政府が発表した"Student visa program trends 2004-05 to 2010-11"*1によると、2009-10年度から2010-11年度では学生ビザの申請件数が5.1%減少しました。

また、2010-11年度の海外からの学生ビザ申請件数は中国人の2万6047件が最多で、豪国内での学生ビザ申請件数はインド人の 3万2770件でした。2010-11年度には、学生ビザ申請の44.5%は、中国、インド、韓国、ブラジル、マレーシア人よるものでした。

全体の学生ビザの認定率は2010-11年度では92.7%で、前年度の88.3%より上昇しました。2011年6月30日現在、54.1%の学生が高等教育のビザを、28.3%が職業教育訓練校のビザを受けていました。(その他は、語学、大学院での研究のビザなど。)

過去7年間の各種学生ビザの申請・発給件数の合計の推移は次のとおりです。

年 度  2004-05 2005-06 2006-07 2007-08 2008-09 2009-10     2010-11
申請件数 188,866 214,457 256,597 305,510 365,997 296,647     281,566
発給件数 175,818 191,347 230,807 278,715 319,632 270,499     250,438

ただ、国別に仔細に見ると、より深刻な面が見えてきます。

最盛期の2008-09年度にはインドからは、80,259件のビザ申請があったものが、2010-11年度には39,645件と半減しています。最多の留学生を出している中国について見ても、同様に、2008-09年度の63,596件から2010-11年度には51,918件と減少傾向は明らかです。

こうした深刻な留学生減少傾向の原因について、同報告書は、次の5点を挙げています。

  • 世界的な金融危機
  • 留学生の安全への懸念の増大
  • 最近の学校閉鎖など学校経営者の不安定さ
  • 豪ドル高
  • 学生ビザ審査の厳格化

金融危機の影響は、世界共通に言えることですが、留学生の安全については、「カレー・バッシング」の嵐が吹き荒れた2009年以降、インドからの留学生が豪州を嫌って米国などに流れたことは当然かと思いますが、この影響も大きく、インドからの留学生が4万人減ったことになります。

学生ビザ審査の厳格化は、豪州に限ったことではなく、英国などでもかなり厳しくなってきているようですので、いずれその影響が数字に表れることでしょう。

欧州諸国での多文化化・多民族化に対する右傾化の動きとほぼ歩調を合わせるかのような「カレー・バッシング」、あるいは、白豪主義への回帰の傾向など、経済的に苦しくなり、失業率が高まると、こうした動きは、どこにでも出てくるものかと考えます。

ただし、これで国際教育交流が退潮となることになっては、今後の世界の共存は大きく遠のいてしまいます。ここは、この分野に関わる者が知恵を集めて、一歩でも前に進む努力をしなければならないときでしょう。