「文化産業立国」の構想

昨日は、経産省の「クールジャパン」構想がなぜ必要になったのか、その背景をごく簡単に記しました。

経産省の計算によれば、日本の文化産業は、(食、観光が含まれていないもの。製造業として、家具・繊維・アパレル・皮革製品・食器・玩具・ジュエリー・工芸・文具、サービス業として、コンピューターソフトサービス・広告・出版・建築デザイン・テレビ・ラジオ・音楽ビデオ・映画・舞台芸術・デザイン・アート)に限っても、2004年現在、日本の売上高の7%、従業員数5%の規模を占めているそうで、自動車、エレクトロニクス産業と並ぶグローバルに稼ぐ産業に育つことを期待したいとのことです。

また、文化産業には、新たな内需創造・雇用創出の可能性があり、衣・食・住・観光を始め、国民生活に関わりの深い分野への波及効果は大きいと考えられています。

例えば、「衣」では、不況下でも、若者や女性ファッションは活況を呈していますし、「食」では、日本食レストランが成長すれば、日本の食材、食器などに波及することが考えられます。「住」では、省エネ・耐震性に優れた日本の住宅産業の成長は、多くの建材住宅設備メーカーに波及することでしょう。「観光」では、地域のエッジの立ったコンテンツ(食など)で観光客にアピールし、地域経済の活性化につなげることも可能なはずです。

こうしたことが、経産省の文化産業の内需拡大への波及効果についての考えです。

一つの問題点は、日本のファッションや食文化は人気なのですが、ビジネスに結びつけられていないので、海外へのビジネス展開を支援し、外需を取り込む必要があると考えられます。

例えば、中国では日本の女性ファッション誌は人気で、ランキング10位内に、中国版Ray、VIVI、ef、GLAMOROUS、an・anの5誌が入っていますが、なぜか、繊維産業では日本は輸出の割合が極端に低く、輸出と輸入の割合は1:50となってます。これに比べると、韓国、フランス、ドイツは1:2、イタリアに至っては1:0.67と輸出のほうが多くなっています。

また、海外の日本食レストランの現状を見ると、米国の場合、「日本食」と称するレストランは約9,000店(10年間で2.5倍)もあるのだそうですが、このうち、日系オーナーの店は10%以下で、アジア系の移民による経営が主流とのことです。パリには200〜300店の「日本食レストラン」が存在するそうですが、日系人が経営する「高級店」と非日系人が経営する「大衆店」に二極化しているとのこと。

海外に行ってまでわざわざ和食屋には私は行きませんが、店構えからして怪しげで和食か中華料理か何か分からない「和食屋」も多く見かけますし、もし、そこで名ばかりの似非和食を出しているとすれば、日本への理解も、日本食ファンを作るも何もあったものではないことは確かです。

こうしたことを考えれば、海外での日本食レストランの認証を出して星を付けるとか、レベル向上に努めると同時に、きちんとした広報をしなければ本当の日本食ファンは増えないことも理解できますが、当たり前のことがこれまで行われてこなかったことも事実です。

長くなるので、経産省の「クールジャパン」構想の冒頭部分についての紹介は、このへんでやめますが昨年6月に「クールジャパン室」を立ち上げたときの基本理念などは、同省の「『文化産業』立国に向けて−文化産業を21世紀のリーディング産業に−」に上述のこと以外にも幅広く、たいへん分かりやすくまとめられていますので、ご参照ください。*1

次回は、クール・ジャパン構想を国際教育交流分野に当てはめて考えると何が言えるかを検討します。

*1:「文化産業」立国に向けて−文化産業を21世紀のリーディング産業に− 2010年6月 経済産業省 http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/creative/bunkasangyou.pdf