「クールジャパン」の必要性の背景

経産省が、なぜ、昨年、「クールジャパン」を提唱したのか、なぜ、この時期に、それが必要だったのか、その背景について考えてみましょう。

これまで、日本の産業として海外で評価され、また、外貨獲得に貢献してきたのは、自動車、エレクトロニクスなどの分野が多く占めていたことはご承知のとおりです。

ただし、近年に至って、これらの産業分野は、韓国や中国に猛追され、全体としては追い抜かれる事態となっています。一つには、賃金も含めて日本での製造コストが高すぎること、海外進出が遅れていること、といった経済的要因と産業構造的要因が大きいわけですが、それをプラスに転換する要素として、ソフト・パワーの支援策が必要と判断されたことが最も大きかったのだと言えます。

つまり、「文化産業」として、例えば、「コンテンツ」「ファッション」「食品」「日用品(家具・文具)」「観光」などの分野を、より積極的に海外に売り出そうということです。

そして、これらの産業はたんにソフト・パワーとして他の産業を支援するだけでなく、これらの産業自体が日本の重要な産業に育つ可能性もあると考えられているわけです。

現に、スタジオ・ジブリの一連のアニメ映画作品なども海外で高く評価されてきましたし、日本の映画も国際映画祭で数々の賞を獲得してきています。

しかし、問題は、産業構造的には、国内需要が低迷するいっぽう、生産コストを下げるための海外展開もあまり進まず、文化戦略として韓国が国ぐるみで仕掛けた「韓流」ブームは、アジアで成功し、そのソフト・パワーは、他の分野の産業をも伸ばす力となり、総体的に日本の存在感は急激に薄れてきているというのが現状であるのです。

つまり、これまでこのブログにも何度か書いてきたように、ソフト・パワーに支援された文化産業以外の産業のアジアでの成長について、日本は韓国に一歩も二歩も後れをとっていると言えます。

したがって、文化産業に力を入れれば、日本や日本製品へのイメージが改善され、総合的に日本の産業が力を増すはずだ、というのが、経産省の提唱する「クールジャパン」構想の基本的なコンセプトなのです。