「クール・ジャパン」の応用問題−2900億円産業をさらに育てるには−3/4

さて、経産省の「クールジャパン」構想に沿って見てきましたが、それについてこれ以上詳しくは、9月10日の脚注の資料を見て考えていただくとして、ただ、経産省の構想があまりにもポイントを突いているので、どうしてもそれが気になるのですが、一応それを離れて、国際教育交流分野では、どういう可能性があるのかをここでは考えてみたいと思います。

まず、省庁縦割りの問題をどうすべきかです。

海外と国内の日本語教育の連携のなさを解決するには、「外務省・国際交流基金」グループと「文科省文化庁」グループとの所管を統合するしかないでしょう。かと言って、緩い連携を持たせる程度では解決できることは少なく、国内外の日本語教育を総合的に担当する役所もしくは団体が必要です。

英国ではブリティッシュ・カウンシルが、フランスではアリアンス・フランセーズが、また、ドイツではゲーテ・インスティトゥートが、そうした役割を果たしてきているように、日本にもきちんとした言語教育のコンセプトを持った専門的組織がないと、海岸線から外側と内側とで別々に動いているのでは、ちっとも効率も良くないし、広報もしにくいし、海外でも十分なプレゼンスとはなり得ていません。

そして、留学生受け入れ政策の実施についても、同じ組織が担う必要があります。日本の教育産業の総合的育成の観点から考えれば、ここでも国内外の間に障壁があっていいはずはないからです。

つぎに、セクター間の連携がないのを改善しなければなりません。

つまり、日本語教育機関(国内外)・大学など高等教育機関・企業の一貫性のある受け入れ態勢をつくる必要があることです。これには、もちろん、地方自治体や地域社会も関わりますが、最も重要なのは留学生受け入れの根幹をなす日本語教育機関と大学などの高等教育機関の連携の強化です。国際的な人財を必要とする企業もこれに接続します。

中央官庁からすると、日本語教育機関はじつは、どこが所管しているのかがこれまで必ずしもはっきりしていません。留学生の入国管理の面では法務省でしょうし、教育という面では文科省とも思えますが、専門学校だと各地方自治体が所管し、また、株式会社立の日本語学校も多く、これまでは、国内に限って言えば(財)日本語教育振興協会が、すべてを合わせ呑む形で、その役割を担ってきました。

しかし、当初からの矛盾である「認証する団体」と「業界団体」との機能を併せ持った同協会は一昨年の事業仕分けで前者の機能を否定されましたから、今後は「業界団体」としての性格を伸ばしていくことになるのでしょう。ただし、その範疇に海外での日本語教育は含まれてはいないことも今後、早急に検討しなければならない事項です。

あまり既存の組織や形式に囚われると改革からは遠のきます。より大胆な革新が迫られているのです。(つづく)