「クール・ジャパン」の応用問題−2900億円産業をさらに育てるには−4/4

そろそろ、「クールジャパン」構想に沿った留学生の受け入れの話のシリーズは、一旦終わりとしたいので、今回は、まだ論じていない部分を取り上げます。

ひとつは、国際交流を担う教職員の質の維持向上についてです。

1970年代後半に私が初めて米国のNAFSA*1の年次大会にシアトルに行ったとき、今日では参加者数は1万人近くになることもあるようですが、当時の参加者は3000人程度でした。それでも、その規模の大きさに驚いたものです。

全米からはもちろん、欧州、オセアニア、アジア、中南米などから大学や語学学校の国際交流担当の教職員が集まり、ワークショップやセッションを数百と繰り広げているのです。そして、皆、ファーストネームで呼び合い、ハグをし合って再会を喜んでいる光景には新鮮な驚きを覚えたものです。

その後、私も毎年のように米国内やカナダでのNAFSA年次大会に出るようになり、いつしか、私にも親しい友人知人ができて、ファーストネームで呼び合ったり、ハグをして再会を喜んだり、セッションを開いたり、ワークショップに出たりするようになったわけですし、そこで知り合った人たちと一緒に調査をして本を作ったりもするようになったのですが、NAFSA自体は全米とカナダを12の地区に分けて地区別にも活発な活動をしています。

国際交流担当者としての知識を豊かにし、スキルを磨き、また、ネットワークを広げ、国際交流担当の教職員たちの質の維持向上に努めているわけです。

私はいたく感動し、後に、日本留学フェアの「大学間交流促進プログラム」というコンセプトをつくり、日本の大学をNAFSAの年次大会にお連れするようにしました。

欧州でも、エラスムス計画を支えるためにEAIE*2が動き出したので、やはり年次大会に大学をお連れするようにしました。今、ちょうどコペンハーゲンで大会の真っ最中でしょうか。

ただし、これは率直に言って国立大学に、まま見られるケースなのですが、現地に行ってみて初めてどのようなイベントなのかを、やっと理解する、という先生もいらっしゃるので、国民の税金を使って仕事をしている以上、より継続性のある参加を考えるべきだと感じたこともあります。今日では、もうそういったことがないことを願います。

もちろん、日本国内でも私も以前、理事・事務局長を務めさせていただいたJAFSA 国際教育交流協議会*3などで、この分野の研修を日常的に行っていますので、教職員の質の維持向上については可能だと思います。また、大学の連合体でも研修を行っているようですし、さらには、日本語学校の分野では、(財)日本語教育振興協会が常に研修を実施したり、日本語教員は日本語教育学会でも研鑽の機会を得ているはずです。

この分野は、担当する教職員が国際的な最前線となるわけですから、その質の維持向上は所属する教育機関にとってたいへんに重要なことの一つであるはずです。

最後に、取り上げたいのは、大学や学校の経営者の理念です。教育機関にとって最も大切であるはずのことですが、じつは、なかなか見えにくいことが多いのです。顔の見える経営者であってほしいと思いますし、国際教育交流がその教育機関にとって何であるのかを明確にする必要があると考えます。

これで、このシリーズをとりあえず終わります。

なお、明日から24日まで、またベトナムに行きますので、その間、もし、ブログを更新できなくてもご容赦くださいますようお願いいたします。

*1:NAFSA:Association of International Educators http://www.nafsa.org/

*2:EAIE http://www.eaie.org/

*3:JAFSA http://www.jafsa.org/