労働力人口が減るから外国人労働力を入れるという単純な思考で適切なのか?

先日、大学のゼミで留学生と地域の交流をテーマに取り上げるという3人の学生グループの訪問を受けました。

さまざまな交流や支援のあり方を探りながら、その大学がある市当局にも提案をしていきたいと意欲的に語ってくれた学生たちは、たいへんに真面目に考えている様子で好感が持てました。

私は多様な可能性についてのヒントをお話ししただけです。

ただ、少し気になったのは、学生たちの事前アンケートの結果により「留学生と地域との交流がない」と考え、何か「こうすればいい」という「正解」を私から聞けるという期待をしているようだったのと、日本の労働力人口が減ってきているから海外からの労働力を入れればいい、と簡単に考えている、あるいは、そうしたことを唱える人の説を素直に受け入れているかのような論調だったことです。

前者については、たぶん、マニュアル世代で、常に正解が存在するという勘違いをしているのかと思いますが、もちろん正解などは存在しないことのほうが世の中には多いわけです。

それと、「留学生と地域との交流がない」という考えに囚われているのですが、それはたぶん事実であるとしても、では、「日本人学生と地域との交流はあるのか」と尋ねたところ、学生たちは答えに窮していました。

大学の存在は、地域にも根差すべきであるのに、今日ではとくに都市部の大学は地域からは隔絶した存在であることも決してめずらしくはないことにも学生たちは気づくべきなのです。

「地域社会」というものが、いったい今日の日本の大都市部に存在するのかどうかといった問題と密接にかかわる話です。

そして、もし、本当に労働人口が減少するなら海外から入口としての留学生を含めた労働力を入れればいい、と単純に考えているとしたら、これについても、もう少しさまざまな角度から検討する必要もある気がします。

英独仏など欧州の政治のリーダーたちが、そろいもそろって「多文化政策は失敗だった」と宣言したことの意味は何なのか、また、人口が減少して小さな国になっていくときに、これまでの経済規模を維持しなければならないという理由は何なのか、といったことを考えてみるように学生たちには話しました。

簡単に答えが出ることではないし、正解などはないかも知れませんが、まずは、世界で起きていることを知り、そして、自らの頭で考えてみることを勧めたわけです。

難しい課題だとは思いますが、学生たちの若さとパワーで、いろいろ検討してくれることを望みます。