留学生奨学団体の連携も必要だ。

日本には海外からの留学生のための奨学金が少ないと、よく言われてきました。他の留学生受け入れ先進諸国との比較は別の機会に譲るとして、日本の現状はどうなのでしょう。

JASSOの「平成21年度私費外国人留学生生活実態調査概要」*1によると、私費留学生で何らかの奨学金を受給している留学生は約6割とのことです。大学・短大、大学院、専修学校(専門課程)の私費外国人留学生(7,000人)のサンプル調査です。これには日本語学校の留学生は含まれていませんから、それを加えれば奨学金の受給率はもっと低くなることでしょう。

それによると、奨学金の受給内容内訳は、JASSOの学習奨励費69.6%で平均月額は54,000 円、大学・学校からが12.2%で42,000円、民間団体の奨学金が10.1%で93,000 円、その他の奨学金が10.0%で66,000円、地方自治体(都道府県市区町村)による援助金が2.3%で32,000 円となっています。

たとえ少額の奨学金であっても、その分、アルバイトの時間を勉強に回せれば、意味はあるかと考えます。

ところで、留学生奨学団体連絡協議会(JISSA)*2という団体があり、留学生の奨学金を支給する財団などの団体が情報やノウハウを交換する機能を果たしていることは、案外知られていません。

奨学金を支給する団体と大学や学校がうまく連携すれば、より有効な奨学金支給を実現できるのではないかと思いますし、すでにそうした試みを行っているのかも知れませんが、かつて、JISSAとJAFSAとのセミナーを開催した経験では、両者の興味関心をすり合わせるのに、なかなか難しいと感じたことがあります。

奨学金支給団体にとっては、JISSAは目の前の公益法人化の問題や税制の問題についての情報、ノウハウの交換に大いに役立っているのではないかと考えます。

日本の民間の留学生の奨学団体の今後の課題としては、やはり海外から直接応募できる奨学金を増やしていくことが第一ではないでしょうか。すでにご報告したように、ロータリー米山記念奨学会*3が今年、試行的に海外からの直接採用を進めています。また、それらの創立時にご相談を受け、ぜひともとお願いした日立国際奨学財団*4パナソニックスカラシップ*5は出資母体のネットワークを生かして海外からの直接採用を行ってきています。

では、中小の奨学団体が、海外からの直接採用を進めるにはどうすればいいかですが、それこそJISSAなどがイニシアチブを取って、その事務局となり、海外にネットワークを広げ、募集選考の窓口となることが十分に可能だと考えるのですが、いかがなものでしょう。

誤解を恐れずに大胆に言ってしまえば、日本に来ている留学生は何とかやっていける人たちが大半なのです。そうではなく、日本に関心を持つ非常に優秀な海外の学生が、日本の奨学金が得られないがために、あきらめて他の国の奨学金を得て他所へ行ってしまう、ということは日本にとっての損失なのですから、それについても奨学団体の連携、あるいは、奨学団体と大学・学校との連携によって、くい止めて、より優秀な留学生を受け入れられる方策を立てられればと考えます。

*1:平成21年度私費外国人留学生生活実態調査概要 http://www.jasso.go.jp/scholarship/ryujchosa21.html

*2:留学生奨学団体連絡協議会(JISSA:Japan International Students Scholarship Association)http://www.jissa.net/

*3:ロータリー米山記念奨学会 http://www.rotary-yoneyama.or.jp/

*4:日立国際奨学財団 http://www.hitachi-zaidan.org/shogaku/

*5:パナソニック スカラシップ http://panasonic.co.jp/scholarship/