欧米的な経済統計に表れないもの

去る9月6日に大和総研のホームページに「お金の使い道からみたASEAN主要国の違い」という統計資料が出ました。*1

これはこれで、データを子細に見ると、たへんに興味深いものですし、こうした統計数字の存在の意義を決して否定するものではありません。

ただ、アジアに実際に滞在していると、こうした欧米流の統計数字に表われて来ないものも多く存在することに気づく人も少なくないでしょう。

まず、東南アジアの地方在住者でしたら、農作物などは自給自足の程度が高く、その分、店で買う食料品は少なくなります。もちろん、その生産価格も安いですから、ドルなどで統計を取って経済水準の高い先進諸国と比較することなど無意味です。

また、政府を信用しない傾向が強く、銀行に預金するのではなく、東南アジアでよく見かける「金行」などで金にして所有していることも、ごく普通のことなので、預金高を比較しても、その人が金持ちかどうかは必ずしも分かりません。

そして、平均すると日本人の1人当たりの所得の1/10以下であるはずの東南アジアの国々でも、日本車はもちろん、高価なドイツ車にさらに100〜300%の税金を払って購入して、街を走っている様子を見たり、あるいは、日本円で、それこそ、「億ション」のような高級コンドミニアムが次々と新築されている現状を見ると、欧米的な統計数字だけで経済を見るのが危ないことだと感じます。

もちろん、富の極端な偏在やインフラ整備の後回しも指摘できるでしょう。それでもなお、現地での実感も統計数字に加えて考える必要があるようです。

中国、韓国、あるいは、シンガポールなどでは子どもの教育に非常に熱心であることは広く知られていますし、ベトナムでもその傾向が強いと言えます。こうした国々での教育費も馬鹿にならないものですが、ベトナムでも中国や韓国同様、今後、経済の向上にしたがって海外留学する若者たちがたいへんに増えることは間違いないと思われます。

*1:お金の使い道からみたASEAN主要国の違い(2011年9月6日 大和総研HP)http://www.dir.co.jp/souken/asia/asian_insight/110906.html