インド人は日本に留学するか?

インド人の留学先としては、その数、10万人を超えて中国人留学生についで多数を占める米国、旧宗主国の英国、一昨年のカレー・バッシングと豪ドル高のせいで、昨年来、数が下向いている豪州などの英語圏への留学が圧倒的に多いわけですが、このところ、英語圏に限らず、韓国や中国、それに遅ればせながら日本の大学も、まだ500人あまりしか来ていないインドに秋波を送り始めています。

産経新聞は、「グローバル30」(G30)に選ばれている13大学の一つ立命館大学ニューデリー事務所で8月、同大と立命館アジア太平洋大の留学オリエンテーションが開かれ、同市の2つの私立高の生徒21人と進路担当の教員など3人が参加したと伝えています。*1

インドでも、生活費が高いのではないか、東京との生活の違いはどうなのか、といった疑問を持っている人がいるとのことですが、参加者たちは、米国の大学よりも日本の大学に進学するほうが安い、日本の奨学金制度のほうが欧米より充実しているから、経済的な負担も相当軽減される、などのことがわかった、などと納得したそうです。

G30のうち11大学は、11月1日にニューデリーで留学説明会を開く予定とのことですが、これを書いている時点で、G30のJUMP*2には、まだその広報は出ていません。現地では、早めに広報をしていることを希望します。

インドでは、私立の教育機関なら小学校から英語で教えていますし、広い国土で共通言語としては英語であることも普通のインド人にとっては、英語圏への留学が抵抗がないことは分かりますし、いったい、日本に来てくれるのだろうかといった不安を抱く日本側関係者も少なくはないかも知れません。

しかし、考えてみれば、英語が第一外国語である国は多いですし、日本語を中学・高校から学ぶ人口は英語学習人口に比べれば、きわめて少ないうえに、中学・高校での日本語学習者が日本に留学する確率もごく小さいはずです。

日印間の経済交流が進展するにしたがって、日本への関心は増してきてもいます。

問題は、まず日本留学情報の少なさでしょう。基本的に英語で広報は足りますから、他の非英語圏に比べれば楽なはずです。立命館大の留学オリエンテーションに出て、日本留学への認識を新たにした人がいるように、広報の機会をさらに増やしていくことが先決です。留学先としての日本について広く情報を出していくことが、まず必要です。

かつて2005〜2009年度には、JASSOでも日本留学説明会をニューデリー、プネ、ムンバイで開催していますが*3、現在は行っていません。情報の露出頻度を上げるという意味では、継続できるといいのですが。

産経の報道によれば、コロンビア大やデューク大、バージニア工科大やボストン大などがすでにインドに拠点を設置する計画を立てているとされるほか、カナダの複数の大学もインド進出を検討中とのことです。

さらに、インドに進出している韓国の企業が韓国語を勉強するインド人学生の学費を負担したり、インド人教授に多額の研究費を支給しているとのことです。

ここでもまた、日本は留学生のリクルート全般で後れを取ってしまっています。

目の前のことに対応するだけでなく、中長期前略がなければ、国際教育交流をリードすることはほとんど不可能でしょう。

*1:日本も参戦 過熱するインド人学生争奪戦(2011.10.6 21:01 産経ニュース)http://sankei.jp.msn.com/world/news/111006/asi11100621020003-n1.htm

*2:JUMP http://www.uni.international.mext.go.jp/

*3:平成17年度日本留学説明会(インド)実施結果 http://www.jasso.go.jp/study_j/info_fair_india_2005.html