外国人1万人、航空券無料で日本に招待も悪くはないかも知れないけれど……。

10月10日の読売新聞の報道によると、観光庁は、震災後に激減している外国人観光客の回復を狙って、2012年度に全世界から、旅費無料で1万人の一般観光客を日本に招待する方針を固めたということです。

主にインターネットで募集し、応募者の旅行計画などが審査に合格すれば、日本への往復航空券を1万人に提供する計画とのこと。こうして来日する旅行者には、日本滞在中にインターネットで世界へ情報発信してもらう方針。日本国内の滞在が安全・安心であることを口コミで世界的に広げる効果を見込み、また、旅行者にはこのほか、震災後の日本旅行についてアンケート調査をしたり、新たな日本旅行のモデルとなるような旅行プランを提案してもらったりするということです。来年度予算の概算要求に、観光庁は11億円を盛り込んだ由。*1

このニュースで、どうもピンとこないのは、航空券無料としても、いったい海外の人たちが、日本国内の旅行の手配をどうするのだろうという疑問がまず浮かびます。各国語で日本国内の旅行情報が、どのくらい入手できるのでしょうか。英語圏と英語を比較的自由に読み書きできる一部の人たちが圧倒的に有利になることはないのでしょうか。あるいは、間に、震災で青息吐息の旅行業者を介在させようということでしょうか。とすれば、自由な発想の旅行が組み立てられるのでしょうか。さまざまな旅行のパターンがあり得ますし、あまりお仕着せのコースやスケジュールの旅行では、当初の観光庁の意図とは違ってしまう恐れが大きい気もします。……などと、いろいろ余計な心配をしてしまう計画ではあります。

だいいち、「日本国内の滞在が安全・安心であることを口コミで世界的に広げる効果を見込み」とありますが、すべて日本に好意的な口コミが伝播するとでも考えているとしたら、あまりに早計ではないでしょうか。

この報道に接して、すぐに思い出したのは、9月21日に日経が報じた「お試し留学で日本離れ解消 文科省、外国人150人無料招待」*2の記事です。

こちらの計画は、日本留学を予定している人たちを、まったくの無料招待ということなので、参加者のモチベーションがどうかといった疑問を前に投げかけましたが*3、報道からだけでは詳細が分からないので即断はできませんけれど、いずれにしても、「震災復興」の名のもとに安直な企画がこの分野でも続く気がしています。

震災復興も海外の人たちに日本を知ってもらう一つの機会ではあるので、これを捉えてうまく使うことは基本的に賛成なのですが、国民の税金ですから、より有効に使うためにも、もう少し広い視野で省庁横断的な発想による総合的な事業を考えられないものかと思うのです。

*1:外国人1万人、航空券無料で日本に招待 (2011年10月10日17時45分 読売新聞) 読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20111009-OYT1T00814.htm

*2:お試し留学で日本離れ解消 文科省、外国人150人無料招待 2011/9/21 23:39 日本経済新聞 http://www.nikkei.com/news/article/g=96958A9C93819695E0E3E2E7E78DE0E3E2EBE0E2E3E39180EAE2E2E2?n_cid=DSANY001

*3:「お試し留学」 150名様、無料ご招待http://d.hatena.ne.jp/keishu48/20110930/1317313024