「日本の若者は内向き」とは誰が言ったのか?
先日、この10日でしたか、フェイスブックに「内向き志向」観の定着過程を下のようにメモしたばかりだったのですが、14日の日経新聞にも同様の記事が載りました。*1
- 2010年3月、ハーバード大学のドルー・ファウスト学長が来日し、「ハーバードの日本人留学生が少ない」と訴える。
- 同年4月11日、ワシントン・ポスト紙ブレイン・ハーディン記者が“Once drawn to U.S. universities, more Japanese students staying home” と書く。*2
- 日本のマスコミがその論調を追随。
- 米国留学は減ったが、日本人の留学先は多様化。留学適齢人口はピーク時の3割減。比率として極端に減っているわけではない。
- 同年7月、産業能率大学の「第4回 新入社員のグローバル意識調査」報告。その「内向き志向」の面だけが強調されて独り歩きする。報告にはそうでない面も記述されているのに。*3
- 「内向き志向」観が世間で次第に定着
どうも日本での論調は、まだまだ米国の自国中心的な考えに振り回されている特徴が色濃く残っていて、「米国留学が減った」=「海外留学が減った」=「日本の若者は内向きになった」といった無批判で短絡的な思考に陥りやすい傾向が見て取れる気がします。
もちろん、日米関係も大切ですが、まずは、私たち自らの目でものごとを捉え直してみる必要はあります。少なくとも米国の大学人やマスメディアの言うことの裏を取るくらいの作業は、日本のどんなマスメディアでも、また、教育関係者でもしなければならないでしょう。
また、文科省始め関係省庁や機関でも、客観的な分析をして内外に示すことも大切です。専門機関や専門家にその分析を委託してもいいのです。
さて、では、本当に内向きになったのかと言えば、半分はそうであり、半分は違う、内にこもる若者も増え、外に行こうという若者も増えているという二極化状態であることは、すでに明らかです。
日本人の米国留学減については、日米教育委員会のサターホワイトさんのまとめが簡潔で、一つの参考になります。
- 少子化で学生の数が減った
- 日本国内の大学が増えた
- 外国人教授や英語授業など、国内の大学が国際化した
- ネットを使えば世界中の情報が手に入る
- 日本は豊かで居心地が良い
- 就職活動が前倒しになり、留学すると不利になる
- 企業は留学経験をあまり評価しない
- 家計に余裕がなくなった
- 米国の大学の学費が急激に上がった
- 学生の英語力が足りない
- 米国は危険との不安がある
- 米国のビザが取りにくくなったとの誤解がある
- 米国のイメージが低下した
- 今の日本社会には、留学を後押しする風潮がない
以上の14項目の多くは、じつは、そのまま、アジアから日本への留学にも当てはまることでもあるのです。
*1:日本の若者は本当に内向きなのか 小倉和夫×鈴木謙介×デビッド・サターホワイト(日本経済新聞 2011/12/14 7:00)http://www.nikkei.com/life/living/article/g=96958A90889DE1E5E0E2E4E4EBE2E3E0E3E0E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;df=4;p=9694E3E1E2EBE0E2E3E3E6E0E6E4
*2:“Once drawn to U.S. universities, more Japanese students staying home”http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/04/10/AR2010041002835.html
*3:第4回 新入社員のグローバル意識調査 http://www.sanno.ac.jp/research/pdf/global2010.pdf