留学エージェントの役割は重要なのに-2

昨日のブログを読んで、「なぜ、留学にエージェントなんて必要なんだ?」と思われた方もいらっしゃるかと思うので、この点につき、少し整理して考えてみたいと思います。

旅行会社のようなもの

例えば、海外旅行に慣れている人でしたら、飛行機からホテル、列車、レンタカーまで自分でウェブで予約して、自分の希望に合わせた日程を組んで気軽に出かけることでしょう。

しかし、外国語に弱いとか、ガイドブックを読んでみても、どこに寄るべきか分からないとか、どのホテルが適当なのか分からない、あるいは、自分で予約なんてするのは面倒だ、という人なら、たいていは旅行会社に相談して予約してもらうのではないでしょうか。または、一括してパッケージ・ツアーを申し込む場合もあることでしょう。

旅行の場合とは、だいぶ違いますが、誤解を恐れずに言えば、留学についても、おおよそはこんなことだと考えてしまってもいいのではないでしょうか。

もちろん、旅行は一時的なものですが、留学は少なくとも半年とか、長い場合には10年近くかかり、その総経費も大きく、その人の一生を大きく左右することも多いだけに、旅行などと比べたら、その人の人生に占める位置は、はるかに大きく、重要であることは自明です。

不十分な日本留学情報の提供

仮に、アジアのある国の学生が、日本に留学したいと考えたとします。すると、まず、日本留学ガイドブックの類を書店で探したり、インターネットで情報を検索したり、あるいは、タイミングが良ければ「日本留学フェア」の会場を訪れて、日本の教育機関などの話を直接聞くことも可能かも知れません。それと、アジアでかなり特徴的なのは、「口コミ」で、友人・知人や親戚などの日本留学経験者に話を聞く傾向が強いことです。

ただし、海外から日本への留学を考える時点で、日本語をかなりの程度まで読み書きできる人口の比率は、一般的には、英語のそれとは比べものにならないほど小さいはずです。

したがって、相談に乗り、情報提供し、その人に最も適していると思える留学の形態や、留学先を助言できる窓口が、留学希望者の身近に必要なわけです。

ところが、よく引き合いに出されることですが、日本の場合、公的な専門的留学情報提供拠点は、JASSOのクアラルンプール、バンコクジャカルタ、ソウルの4か所のごく小さな事務所しかなく、バンコクの1名を除けば、各所2名の現地スタッフしかいないで、欧米や豪州などのそれに相当するところとは比べるべくもない、ということが言われるわけです。

具体的には、米国の「エデュケーションUSA」は173か国400都市以上、英国の「ブリティッシュ・カウンシル」は110か国197都市、フランスの「キャンパス・フランス」は97か国155都市、ドイツの「DAAD」は14か国14都市に加えて情報センターが47か国50都市…。*1

以上の彼我の決定的な差については長年指摘されてきていますが、一向に改善の気配すら見えません。

質の良いエージェントの育成が喫緊の課題

一つには、省庁縦割りで海外に窓口を設けてきているので、文科省は予算も人も得にくいという事情があるわけです。文科省関係では、日本学術振興会(JSPS)が海外10か所に研究連絡センターを置いていますし、また、外務省関係では、国際交流基金が海外22か所に拠点を置いていますが、どちらも一般的な日本留学の情報を提供するものではありません。

それと、今年1月20日閣議決定に基づき、JASSOについては「その機能を整理した上で、統合後の法人への統合、事務・ 事業の他主体へ一部移管等、事業の他主体へ一部移管等」につき、また、「国際交流基金国際観光振興機構の統合あるいは連携強化の在り方について」どちらも、この夏までに結論を得ることになっています。*2

こうなると、ますます、諸外国・地域で日本留学について情報提供し、相談に乗り、手続きをするエージェントの必要が増すはずなのですが、問題は、現実には、その業界が未成熟で不安定であることなのです。エージェントの質の向上のために所管官庁とも連携し、業界を組織化し、ガイドラインや、倫理綱領などを定めて、それをきちんと遵守するように方向づけることが、じつはかなり重要で喫緊の課題なのです。

留学業界を健全に育て、質の良いエージェントを増やしていくことは、日本語学校や大学などの高等教育機関にとっても必要なことで、自らの問題ととらえて何らかの動きを早急に開始するべきときと言えるでしょう。

*1:「国費外国人留学生制度の成果・効果と改革の方向性」http://www.jasso.go.jp/about/documents/yoshihirotaniguchi.pdf

*2:独立行政法人の制度及び組織見直しの基本方針(案)http://www.cao.go.jp/sasshin/kaigi/honkaigi/d24/pdf/s4-5.pdf