今こそ、「ワンストップ・サービス」が必要

30年ほど前から、海外に行くと「日本の大学から来る人が、来るたびに違う人で、そのたびに同じことを尋ねられ、私たちも何度も同じことを答えてきましたが、状況はちっとも改善されません。」と言われることが多かったのですが、今でもその傾向はあるのでしょうか。

以前なら、海外に行くこと自体が、それこそ一大事で、したがって、「不公平」にならないように「順番に」替わるがわる出ていた、といった時代もあったかも知れませんが、まさか、今日も、まだそうであるとも思えません。その頃は、東京駒場のAIEJ(当時)の会議室に集まっていただき、事前に説明会などを開催したものです。出席者の中には、なぜか訳もなく力が入って緊張している大学の教職員も見受けられました。慣れていない人が多かったということなのでしょう。

AIEJ/JASSOの「日本留学フェア」などに来る大学の教職員も、海外に来てみて初めて、留学を考える若者たちの様々な状況に気づく人も多かった時代もあったかと思います。

大学でも、学内の組織的にも海外担当の機能が集約されていなかったのですね。

海外の人たちにとっては、日本の役所や団体のそれぞれの所掌範囲は分かりにくく、大使館に訊くほうがいいのか、AIEJ/JASSOに尋ねるべきことか、国際交流基金のほうがいいのか、それともJICAなのか、あるいは、JSPSか…と迷うことも多いわけです。そして、海外のそうした機関や団体の窓口も、多くは散在していて、1回で用が足りることのほうが少ないこともしばしばです。

例えば、クアラルンプールのジャラン・アンパンにある大きくて立派なブリティッシュ・カウンシルには、英国留学の窓口や資料室、英語学校、教員研修、技術研修、IELTSなどの試験の機能が集約されていて、昔、私はそれを羨ましげに横目で見ながら、当初は丘の上の住宅街の分かりにくい場所にある帰国留学生会の建物の奥に看板も出さすに開設されたAIEJの事務所に屈辱的な思いで行ったものです。

その後、海外事務所の担当になり、バンコクジャカルタは、国際交流基金と同じビルに事務所を開設しました。霞が関ではいざ知らず、現地では、当初恐れられていた摩擦などは起きるはずもなく、相互に補完し合う役割は機能したと考えています。ただし、日本国内では所管の役所が違おうと、なぜ、別々にオフィスを構えなくてはならないかは、なかなか納得のいくものではありませんでした。

利用者にも不便だし、経費の節約にもなりませんから。

その後、ソウルにもAIEJの事務所を開設し、予算的には北京事務所まで認められたのですが、中国独自の諸般の事情もあり、北京では大使館の立派な広報文化センターが日本留学情報の提供をしています。

行革を進めてきた政府が、こうした窓口の一本化を、まだ実行できないでいることは、たいへんに残念なことだと、今も思っています。

利用者のためにも、予算の節約のためにも海外でのワンストップ・サービスを一日も早く実現したいものです。